そのひのことごと

平和に生きたい個人の個人による覚書なのでできれば優しくしてほしい

2022年の推し本まとめ

年明けてからやるな。

 

2022年の読了本はブクログの記録によると4950冊、上下巻があったので4849作だったようです。登録漏れがありそうな気もするけど、覚えてないということはそういうことなのでもういいや……。いいな~と思った本を登録し損ねていたのでほんとだめ。

ということで、個人的に良かったぞ~~~というのを発行年に関わらずピックアップ。

本当は10冊やるつもりだったけど途中で力尽きたのでとりあえず6冊……。気が向いたらあとで10冊まで増えます……。ほか読んだ本はここ

 

1.オリヴィエ・トリュック『影のない四十日間』(東京創元社

スウェーデンノルウェーフィンランド。北欧三国の国境を跨り、トナカイを所有し生活する先住民:サーミ人の一人が殺された。『トナカイ警察』と呼ばれる特殊警察官のベテラン&新人コンビが捜査に当たる。当初はトナカイの放牧をめぐるトラブルが原因と見られていたが……?

フォロワーが「現代北欧版金カムだこれ」と話していて気になったミステリ。上下2冊巻だけど、面白いので長さを感じず夢中で読んだ。

恥ずかしながらサーミという民族についてこの本で初めて知識を得たのだけれど、サーミキリスト教圏の関係に、アイヌ倭人の関係とかにも通じるものを感じたりもして、神妙な気持ちと知識欲を同時にかきたてられる作品。ベテランおじさん主人公と若手新人女性というベタコンビも、現代の感覚で描かれてるところがとてもよい。

そんでこれさ~~~~~ラストがさ~~~~~~~~!!!! その方向で落としてくる~~~~!!!??? 不意打ちすぎて真正面から食らってしまった。おすすめです。

 

2.桜木紫乃『緋の河』

昭和の釧路、厳格な家庭で男として生まれながら、色白で小柄で愛らしく育ち、町で出会った娼婦のように「きれいな女の人になりたい」と願う主人公。周囲に理解などされるわけもない願いを胸に、「女の偽物」ではなくいっそ「この世にないもの」になるため、高校を中退し、家を飛び出し、向かった先に続く道とは。

これ1年といわず人生の名著枠にいれてしまうかもしれない。マ~~~~~~ジでおもしろい。ものすごいエンターテイメントでありながら、人生の教えであり、鼓舞であり、他人の人生の消費でもある。

これだけ重くてしんどそうなのに常に勢いと爽快感があるのがすごい。こんなずっと「おもしろ……」と思いながら読む本も早々ない。(序盤物語が動き出すまでがややしんどいけど、家を飛び出してからの起伏に富んだおもしろさが異常)

なにも情報入れずに手にしたので、さらに後書きと解説を読んで打ちのめされてしまった。私をフォローしているような人間にはことごとく刺さると思うので、なんか読みたいなと思ったらぜひ手に取ってみてほしい。激推し。

 

3.早瀬耕『未必のマクベス』(早川書房

IT企業の敏腕営業マンである優一は、同僚で親友の浩輔と共にバンコクでの商談を成功させた折、 マカオの娼婦から予言めいた言葉を告げられる。「――あなたは、王として旅を続けなくてはならない。」  やがて二人は海外法人の代表を任されることになるが……。

マジでめちゃくちゃ面白いんだけど、この小説を好きだと公言する男とはあまり仲良くなりたくない、しかしめちゃくちゃ面白い、そしてしゃらくさいサスペンス&恋愛小説。このしゃらくささがむしろ令和にはノスタルジーとして心地いいんだわ!!

アジアを舞台に日本人でハリウッド映画やってるみたいな、いい意味での雑さとスケールの大きさと繊細な感情が絡み合ってフィクションの醍醐味みたいなところがある。

これさ~~今実写想像するなら浩輔は「演:山本耕史」になっちゃうよね~~~~~~(これですべてを察してほしい)

マクベス知ってるとより面白いと思うけど知らなくても面白いです。男と男の巨大感情が好物な人は読んでほしい。女と女の巨大感情も、男と女の巨大感情も存在するのでお得です。

 

4.『九段下駅、或いはナインス・ステップ・ステーション』(竹書房

2031年、南海地震に襲われた日本に中国が侵攻。2033年、東京は東西に分断され、東は米国、西は中国の管理下にあった。警視庁捜査一課の刑事コレダ・ミヤコは、米国の要請により、平和維持軍のヒガシ・エマ少尉(彼女は瞳に高性能型カメラを内蔵したサイボーグである)と事件の捜査に当たることになる――。

深緑野分の『戦場のコックたち』を読んだときに「え? これ翻訳小説じゃないの?」となったのも記憶に新しいが、本作「え? これ翻訳小説なの? しかも複数作家による連作なの? マジで?????」という衝撃がすごい。海外作家がこれを書けるの? いや確かにこんな設定、海外作家しか書かないかもしれないけれども!?

「海外から見たお約束ウソ日本SF」と「国内作家が書いたと言われてもまったく違和感のない日本描写」が同居する衝撃を味わうだけでも、この本を読む価値はある。君も「やっぱ外から見ても日本こんな感じなんだ! さ、最悪!!」という気分になろう!(どんな勧め方?)

それはそれとして急ごしらえでチーム組まされて互いの距離感探りあってる女子バディ嫌いな人いる? いないのよ(独断反語) ジャパニーズサブカルチャーに対する深いリスペクトが感じられるので攻殻とかパトレイバーとかそのあたり通ってきた人も是非。

 

5.辻村深月『傲慢と善良』(朝日新聞出版)

婚約者が、ある日忽然と姿を消した。かつてストーカーの存在に怯え、助けを求めてきていた彼女。無事なのか。今、どこにいるのか。その居場所を探すうち、主人公は彼女が「自分と出会うまで」の人生を知らないことに気づき――。

辻村深月ほんと書いてほしくないこと全部書く。(池の水全部抜く)

タイトルは「高慢と偏見」のアレンジなわけですけど、途中でこのフレーズが出てきた時の「傲慢と善良~~~~~~~~~~~!!!!!!」という自動リピート作業とダメージがすごい。これが刺さらない人間の人生は幸福である。ミステリかと思ったらとんでもない恋愛小説だったぜ! でも恋愛小説と思って読んだら痛い目を見るぜ! だけど読み終わったら恋愛小説としか言えないんだよなあ。そういう小説です。

 

6.如月新一『あくまでも探偵は』

平凡ながらどうにもお人好しで、困っている人を放っておけない「僕」は、クラスメイトのペット探しをきっかけに、眉目秀麗な優等生「森巣」との交流が始まる。
ペット探しは、やがて動物の不審死事件に繋がり、それを追いかけるうちに、「僕」は常ににこやかで人気者である「森巣」の別の顔を目撃し――。

森巣を犬飼貴丈さんに演じてほしい(これですべて伝わってほしい)(伝わらない)。

最近豊作だぞボーイミーツボーイミステリ! 豊作すぎて外れないかドキドキしながら読んだけどこれは当たりだと思います! 続刊も読みます!

日常モノというにはでかい事件起こってるけど、日常の延長線にあるのがなかなか面白い設定だと思う。キャラの魅力で保たせてる向きもあるけど、キャラはいいにこしたことはないので正解。森巣が嫌いなオタクいないのよ。(巨大主語2回目)

ライトに読めるので気負わず手を出していただきたい1作!

 

2023年積本

トナカイ警察シリーズ続刊だ!!超楽しみ

 

ピーター・スワンソン、今まで一冊もはずれがないので作家買い確定。読んだことない人はとりあえず『そしてミランダを殺す』おすすめです。

 

2021年の話題作が文庫落ちだ! 買います。