そのひのことごと

平和に生きたい個人の個人による覚書なのでできれば優しくしてほしい

なんでもない日に花を買う

嘘である。めちゃくちゃなんでもある。ここしばらく贔屓にしている役者さんの舞台公演である。めでたい。祝したい。

その人の仕事に注目するようになってしばらく、映像作品が続いていたので機会がなかったのだけれども、いつか舞台があるのならぜひ観たいし、そのときは日頃の感謝もこめてスタンド花を贈りたいなと、だいぶ前から皮算用していた。(出費の場合も皮算用という表現でいいのかという疑問は残る)

そんなふうだったから、このたびの舞台の告知は本当に嬉しくて、無事にチケットを手に入れてからというもの、いろんな花屋を覗いたり、知人に声をかけたり、イメージを膨らませたりしていたのである。

 
が、今回一般の方からの受付はなかったよ。


そっかーーー! そうかーーーーーーーーーーーーー!!!!

残念だけど仕方がない。
各方面その節はお騒がせして申し訳ございませんでした。
とりあえずお手紙だけしたためることにして、観劇の準備は完了です。

ただこの既に膨らみまくってしまった花を買いたい気持ちをどうしよう。

花を買う機会ってなかなかない。たぶんホールケーキを買うくらいない。
いや私だって、日常的に花屋を覗いて、なんとなしに季節の花を買って帰るような暮らしに憧れはある。しかし一人暮らしの女にそんな心と財布の余裕は(あまり)ない。加えて田舎育ちなので、祝い事でもない限り「花は庭から切ってくるもの」みたいな感覚があってハードルが高い。

その一方で、花ってやっぱり綺麗だし嬉しいし楽しいのだ。わくわくする。
誤解を恐れずに言えば明確に「無駄」であるところがいい。
無くても生活にはなんら支障はないけれど、あればその場が潤う気がする。しばらく楽しんだらそれで終わりで、後腐れがないのもいい。

つまり完全に目的がずれているが、このとき既に「花を買う」という行為自体を楽しみたくて仕方がなくなっていたわけだ。


よし買おう

じゃあ買おう。勝手に買って、勝手に愛でて、勝手に祝おう。
さすがに家にスタンド花は置けないというかそもそも一人では買えないので、予算は抑えて、部屋で浮かない程度のアレンジメントにすることにした。

贔屓の役者さんの応援にという名目こそあれ、自分のためにそこそこ値の張る花を買うなど早々あることではない。そうとなったら掃除である。

花が置ける、そして花を置いて見栄えのする部屋にせねばならない。
クローゼットからあふれた服が散っているとか、花を置く予定のテーブルに本が積まれているとか、中身のわからないBlu-rayが放置されているとか、光熱費の領収書が溜まっているとか、飲みかけの錠剤シートが転がっているとかそういうのはナシだ。

結果床と机の上から物をなくすためだけに芋づる式にあらゆる場所を片付ける羽目になり丸3日かかった。

どんびきですよ。どんびきしたもののまあよくやりましたよ。なぜか古い鍋まで捨てたりしたよ。ベッドの横に積まれている段ボール箱と結局しまいきれずフレームにかけてるジーンズとチノパンは見ないことにする。
やれる限りはやった。このへんで手打ちにしないと、公演初日に間に合わない。


ということで買ってきた

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嬉しい。(そして本棚に入りきらなかった文庫本である)(下ろしなよ)

家に花があるの、望外に嬉しい。いつもの部屋に、普段と違う彩りがあるだけで文字通り華やかになる。どことなく余裕が感じられる。

あとこれ役者さんの情報(性別や年齢など)と舞台のタイトルだけ伝えて注文したのだけれども、仕上がりの印象が自分のイメージと近かったので、それもなんだか嬉しかった。なかなかに美しい贅沢だ。

自分が観劇するわけでない日も、花が目に入ることで「ああ、今日もよい公演になるといいな」と、少しだけ想いを馳せる時間がある。
さすがに千秋楽までは保たないだろうけれど、舞台を身近に感じてちょっといい。


せっかくなので写真を撮る

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後腐れがないのが良いとか言ったけれど、残しておきたい気持ちもあるのでパシャパシャ撮った。

良い機材を持っているわけではないので、iPhone(しかも5S)撮影である。
素人なので腕もないけれど、それなりに写してくれるから機器の進歩はすごい。補正だって楽々できる。

自己満足ながらファンレターに同封しようと思っていたので、サイズや用紙の種類を試しがてらプリントしてみた。白枠をつけるとなんだかそれっぽい。
はじめはPCで加工してカードにしようかなと思っていたけれど、これくらいの何気なさのほうがしっくりきた。

撮影機能つきの携帯電話、特にスマートフォンが普及してから、本当に日常的に写真を撮るようになったけれど、思えば紙にまで落としたのは久しぶりだ。こうして見ると、写真ってやっぱりいいなと思う。

 

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あまったぶんは部屋に飾ってみたよの図。

これ、裏面に観劇の感想を書いておくと、そのまま記録になっていいかもしれない。楽屋花やスタンド花を贈れたときも、写真が撮れたらそんな風に残していくと楽しそう。

なにか特別に好きなことがある人って、それにまつわるものを勝手に祝いがちだと思うのだけれど、私は今までそういうときは、概ねケーキを買っていた。
もちろんそれには、なんだかんだと理由づけして、ケーキを食べたい気持ちも含まれる。
ただ、年を重ねるにつけて、ケーキに対する執着も薄くなってきたりとか、そういう気分じゃない日とかもあるわけで(悲しいことに胃が弱い)、ああ、そういうときに花を買うのもいいなと思ったのだった。部屋片づくし。

誰かを想って、自分のために花を買う。経済活動として悪くないです。